研究と産業応用のギャップを埋めるには?~Jijと豊田通商に聞く、社会実装へのヒント~ 2020年6月19日、日本マイクロソフトは量子コンピューティング活用を支援するサービス「Azure Quantum」のQuantum-Inspired Optimization(以下 QIOと表記)を活用した共同研究の成果を発表した。量子アニーリングを活用し、企業活動における最適化問題の解決に取り組む株式会社Jijは、豊田通商と「交通信号制御の最適化」をテーマとした共同研究を進めている。 共に研究を行ったJijの代表・
量子コンピュータ Googleが量子超越を達成 -新たな時代の幕開けへ(後編) 前編では、量子超越性実証の概要と意義に触れた。後編では、Google が具体的にどのように量子超越性を示したかについて解説し、量子超越性実証後の次なるマイルストーンがどのようなものになるか考察する。 Googleによる量子超越の解説動画 量子超越性実証のアプローチ:ランダム量子回路サンプリング Googleの研究チームが量子超越性を示すために考えた巧妙な問題設定は、「ランダム量子回路サンプリング」と呼ばれる計算タスクである。(Google AI Blog
量子コンピュータ Googleが量子超越を達成 -新たな時代の幕開けへ(前編) 2019年10月23日、Googleが量子超越を実現したという論文を公開し、量子コンピュータの歴史に新たな1ページが刻まれた。 「量子超越」は、量子コンピュータの歴史における大きな一歩である。Googleの研究チームは、最速のスーパーコンピュータを使っても1万年かかる問題を、Googleの53量子ビット(qubit)の量子コンピュータは10億倍速い、200秒で解けることを示したという。 今後、Googleが示した量子超越性に対して様々な角度から検証がなされていくだろう。量子超越性は、
量子コンピュータ イオントラップの原理と冷却イオン量子ビット 図 1. リニアイオントラップ中に捕獲された8個の40Ca+イオン こちらは、リニアイオントラップ中に捕獲された40Ca+イオンの写真である。特定の波長のレーザーを当てると、その光をイオンが吸収し、さらに自然放出によって光を放出する。それを高感度なカメラで撮像することで、このように光り輝くイオンの写真を撮ることができる。 これらのイオンは超高真空内で捕獲されており、外界とは孤立した状態にある。また、
量子コンピュータ “研究室発ベンチャー”の強みとは?「量子コンピュータ」「量子アニーリング」に取り組む2社が見据える、社会実装への道のり 近年、「量子コンピュータ」「量子アニーリング」という言葉をよく聞くようになった。 しかし、マーケティング目的のキャッチフレーズだけが先行している印象も受ける。 「量子コンピュータ」「量子アニーリング」は、いかなるポテンシャルを秘めた技術で、社会実装はどの程度進んでいるのか。本記事では、量子アニーリングを活用し、企業活動における最適化問題の解決に取り組む株式会社Jijの代表・山城悠氏と、
「量子計算機が古典計算機より優れている」とはどういうことか はじめに Feynmanの論文から始まった量子計算機の研究は、今日では多くの学術的・社会的注目を集めている。量子計算機とは量子力学の法則に基づく計算機であり、状態の「重ね合わせ」や「干渉」など、古典計算機にない特徴を活用して計算を行う。しかしながら、量子力学は多くの人にとってなじみの薄いものであり、それゆえ量子計算機の能力についても誤解が多く見られる。たしかに量子計算機というテーマはいまも研究途上であるが、
素材企業が拓く「量子コンピュータ」の未来 QunaSys × アーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社 はじめに ごく最近まで、「量子コンピュータ」という言葉は、「タイムマシン」と同じくらい空想に近い“遠い未来の技術”というイメージで受け止められていました。GoogleやIBMといったビッグプレイヤーが取り組んでいる記事を目にすることはあっても、素材業界にとって、
量子コンピュータ 量子コンピューターの “よくある誤解” Top10 量子コンピューターは量子力学の原理を利用して計算を行う次世代コンピューターで、多くの国の政府が重点分野に指定、IT企業も開発競争に参入し、近年日本でも関心が高まっています。5年くらい前には「量子コンピューター」の文字を、毎日のようにニュースやウェブの記事などで目にすることになろうとは「思ってもいなかった」というのが正直なところです[1, 2]。 さて一方で、量子コンピューターに関する誤解も多く見受けられます。量子コンピューターは量子力学の原理を利用して計算を行う次世代コンピューターですが、
量子コンピュータ 「量子コンピューティングの次のステップ:コンピュータサイエンスの役割」全訳 訳者まえがき この記事は2018年5月にComputing Community Consortium (CCC)主催で行われたワークショップ「量子コンピューティングの次のステップ:コンピュータサイエンスの役割(Next Steps in Quantum Computing:Computer Science’
量子コンピュータの金融応用の展望 量子コンピュータが実現すると、様々な産業・業界が影響を受けると言われている。Boston Consulting Groupのレポートでも、化学・製薬・IT(機械学習)・金融・流通・エネルギーといった業界が挙げられている。実際、昨年(
IBM-量子コンピュータを使った教師あり学習 2018年4月末日 IBM の研究グループから、量子コンピュータを使った教師あり学習の実験結果が発表された。(Supervised learning with quantum enhanced feature spaces) この記事ではこの結果について解説する。 以前 量子コンピュータ×機械学習
量子コンピュータ 量子コンピュータで物質をシミュレートする 量子コンピュータが古典コンピュータと一線を画するところは、情報を量子力学的に保存し、その情報を量子力学的に扱うことである。量子コンピュータにおいて情報は $$ \alpha |0\rangle + \beta |1\rangle$$ のように$|0\rangle$, $|1\rangle$
量子コンピュータが社会を変える日に向けて 本稿では、米国カリフォルニア州のマウンテンビューにて、2018年12月10日から12日の日程で開催されたカンファレンス、Q2B: QUANTUM FOR BUSINESS 2018 に参加して知ったこと、そして2019年の量子コンピュータ業界の発展に必要なことをまとめます。 Q2Bとは Q2BはQCwareという量子コンピューティングのベンチャーが主催する量子技術とビジネスをつなげるカンファレンスで、今回は昨年2017年に続き2回目の開催です。 ちなみに、
量子コンピュータ 量子コンピュータを実現するハードウェア(後編) さて、前回の記事では量子コンピュータを実現するための要件をリストアップした。この記事では、量子コンピュータを実現するハードウェアを紹介していこう。 ほとんどの量子デバイスが格闘しているのは、デコヒーレンスの問題だ。前回の記事で提示したように、量子計算を行うにはデコヒーレンスを十分に抑えることが前提条件となる。 また、デコヒーレンスの他にも、量子コンピュータは前回の記事で紹介した「要件」をクリアしなければならない。また、各物理系にとって得意なことや現状不得意なことがある。
量子コンピュータ 量子コンピュータを実現するハードウェア(前編) 現在、企業も含めた世界中の研究グループが量子コンピュータの実現に向けての研究を行っており、様々な物理システム(ハードウェア)で開発が進められている。 しかし、どの技術が最終的に成功するのかは明らかではない。 ここでは、量子コンピュータを実現するいくつかのハードウェア候補とそのハードウェアを研究・開発している企業、研究グループを紹介していく。 その前に量子コンピュータとそれを実現するハードウェアへの理解を深めるために、量子コンピュータに求められる要素について整理していこう。 量子コンピュータの重要な要素として「デコヒーレンス」
量子コンピュータって速いの? 量子コンピュータの話をすると、「量子コンピュータって速いの?」と聞かれる。このすごく素朴な疑問は当然のように速いという回答を期待しているようだが、答えるのに戸惑ってしまう。 NISQ (Noisy Intermediate-scale Quantum) deviceという、ここ数年の開発のターゲットとなっている量子コンピュータは、遅くても1ms以内に計算が終わる。これは速いと言いたいところだが、正確には1ms以内に計算を終わらせなければならないと言った方が正しい。 量子コンピュータは、
量子アルゴリズム Quantum Algorithm Zoo全訳 前書き 訳者前書き この記事はStephen Jordan氏によって作成され運営されているWebサイトQuantum Algorithm Zooを、運営者の許可を得て日本語訳したものである。Quantum Algorithm Zooは現在知られている古典アルゴリズムより高速な量子アルゴリズムをまとめたWebページで、2018年2月現在60個のアルゴリズムが紹介されている。この翻訳記事は2018年1月18日でNISTにおいて公開されていたバージョンをもとに作られている。 本記事は以下のの三つ記事に分かれている。 代数アルゴリズム、数論アルゴリズム オラクルアルゴリズム
量子アルゴリズム Quantum Algorithm Zoo全訳 代数的アルゴリズム、数論アルゴリズム 本記事はQuantum Algorithm Zoo全訳シリーズの一部です。 以下のリンクから他の記事に飛べます。 前書き 代数アルゴリズム、数論アルゴリズム(本記事) オラクルアルゴリズム 近似アルゴリズム、シミュレーションアルゴリズム Algorithm: 因数分解 Speedup: 超多項式的
量子アルゴリズム Quantum Algorithm Zoo全訳 オラクルアルゴリズム 本記事はQuantum Algorithm Zoo全訳シリーズの一部です。 以下のリンクから他の記事に飛べます。 前書き 代数アルゴリズム、数論アルゴリズム オラクルアルゴリズム(本記事) 近似アルゴリズム、シミュレーションアルゴリズム 訳者注:この項目では、入力に対してある決まった規則で出力を返すオラクル(神託機械)
量子アルゴリズム Quantum Algorithm Zoo全訳 近似アルゴリズム、シミュレーションアルゴリズム 本記事はQuantum Algorithm Zoo全訳シリーズの一部です。 以下のリンクから他の記事に飛べます。 前書き 代数アルゴリズム、数論アルゴリズム オラクルアルゴリズム 近似アルゴリズム、シミュレーションアルゴリズム(本記事) Algorithm: 量子シミュレーション Speedup: 超多項式的
量子コンピュータ 加速する超伝導量子コンピュータ開発: 量子コンピュータ工学の創生 今回は、JST ERATO中村巨視的量子機械プロジェクト内のグループリーダーとして超伝導量子コンピュータの開発を進める田渕豊氏(量子コンピュータはじめましたで量子コンピュータの作り方も紹介している)に現場の研究者視点から話を聞いた。 DRAMと超電導量子ビット 超伝導量子ビットの説明の前に通常の我々のコンピュータ上でどのようにビット(以降、量子ビットと区別するために古典ビットと呼ぶことにする)が物理的に表現されているか見てみよう。我々のコンピュータ上の情報の保持はDRAM(動的ランダムアクセスメモリ)が担っている。電源をオフにしても情報を保持できるハードディスクドライブと異なり、DRAMはCPUが行う計算のための作業領域として情報の保持に使われる。
量子コンピュータ 量子コンピュータの現在とこれから 「50~100qubitある量子コンピュータは今日の古典コンピュータの性能を上回るかもしれない」 - NASAの研究所で行われたQ2B Conferenceでカリフォルニア工科大学のJohn Preskillはそう唱えた。 ただ、彼はそれに「しかしながら、量子にあるノイズにより、信頼可能な計算をするために量子回路のサイズを制限せざるを得ない」と付け加えた。これがどういう意味か解き明かして行こう。 量子コンピュータとは そもそも量子コンピュータとは何者なのか。
量子機械学習 量子コンピュータ×機械学習 2017年12月 量子コンピュータベンチャーである Rigetti からキャッチーな研究成果が発表された。その題は、「ハイブリッド量子コンピュータによる教師なし機械学習」。(Unsupervised Machine Learning on a Hybrid Quantum Computer) この記事では、
量子コンピュータ 量子コンピュータの挑戦: スーパーコンピュータに勝てるだろうか? Google、IBM、Intel、そして Microsoftといった巨大IT企業たちが量子コンピュータの開発に熱心になっている。それは量子コンピュータが従来のコンピュータよりも圧倒的な速度で計算を行うことができると期待されているからである。 特に最近では、さまざまな種類の"量子"コンピュータもしくは量子力学から着想を得た専用マシンが登場してきている。しばしば、スーパーコンピュータの〜〜倍速いという言葉でそれらのマシンの性能が謳われたりすることをよく耳にする。